今回はアクアマリンふくしまを紹介!
名前にもなっている通り福島県にある水族館なのですが、実は水族館好きの方々からは圧倒的な人気を誇る館なんです。
そんなことからずっと行きたかった水族館の一つだったのですが、2月についに足を運ぶことが叶いました。
水族館のあるべき姿というのは人それぞれでとても定義できるものではありませんが、私にとっては(少なくとも社会教育施設という観点では)水族館の一つの到達点かもしれないなと思える1館でした。
前置きでかなりハードルをあげてしまいましたが早速見ていきましょう!
基本情報
入館料 一般1850円
小〜高校生900円
営業時間 3/21~11/30:9:00~17:30
12/1~3/20:9:00~17:00
休館日 年中無休
アクセス JR常磐線「泉駅」下車後路線バス。
「イオンモールいわき小名浜」下車後 徒歩約5分
URL https://www.aquamarine.or.jp/
写真付き展示生物リストはこちら
館内レポ
チケットブースを抜けると屋外へ。
順路の最初は「わくわく里山・縄文の里」。名前の通り縄文時代の自然環境を再現しているエリアです。
写真のようなトンネル状の順路をひたすら進んでいきます。
縄文時代の風景が開放型の窓から広がる中、オオコノハズクやアカネズミ、アオダイショウなどの山に暮らす生き物たちがところどころに展示されています。
そして忘れてはならないのが道中に示されているこちらの環境水族館宣言。
読みやすいように以下に掲載内容を書いておきます。
ふくしま海洋科学館・アクアマリンふくしまは、開館3周年を記念して「海を通して人と地球の未来を考える」の理念のもとに、環境水族館宣言をします。
・アクアマリンふくしまは、子供たちが「自然への扉」を開く体験的学習の場として充実させ、環境に優しい次世代の育成をめざします。
・アクアマリンふくしまは、生物にとってすみやすく、全ての年代の人々が安らぎを感じることのできる理想の環境展示をつくりだします。
・アクアマリンふくしまは、里地・里山、海岸など身近な自然環境の修復、再生、持続的利用について市民と協働し、保全活動を支援します。
・アクアマリンふくしまは、絶滅が危惧される動植物の繁殖育成の研究にとりくみ、地域の保全センターとしての役割を果たします。
・アクアマリンふくしまは、世界動物園水族館協会の会員施設として、グローバルな情報を発信し、世界の保全活動と連携します。
このような理念を持っている館は他にもあると思いますが、こうして明確に理念を打ち出すことは水族館にとって重要であり、素晴らしいことだと思います。
順路を進み長いトンネルを抜けると開けた空間が。
ここは「カワウソのふち」というエリアで、ニホンカワウソが絶滅に至るまでの経緯がパネルで解説されています。
また、ニホンカワウソの近縁種であるユーラシアカワウソの展示も行っています。あいにくのお天気だったのであまり伝わる写真がなくて申し訳ないのですが、この展示のクオリティは凄まじいです。
水中のみならず陸上部まで自然環境を再現し、陸上には様々な草木、水中には魚たちも暮らしています。
そしてこの展示は「環境エンリッチメント」という飼育動物の飼育環境を豊かにする取り組みにおいて、野生のユーラシアカワウソに見られる哺育行動を新たに引き出すことに成功。優れたエンリッチメントを行っている展示に送られるエンリッチメント大賞を2018年に受賞しています。
カワウソ展示に感動しながら順路を進むと、いよいよ水族館が目の前に現れます。
入り口にはシーラカンスのオブジェが
館内最初の展示エリアは「海・生命の進化」
まるで博物館のような展示エリアでは天井からダンクルオステウス(1)がお出迎え。生物の進化と絶滅の歴史を化石や生きた化石(2)と呼ばれる生き物たちの展示を通し紹介しています。
(1)ダンクルオステウス
デボン紀に存在した巨大魚。実は頭から肩までの化石しか見つかっておらず胴体に関しては想像図しかない。
(2)生きた化石
地質時代から例外的にゆっくりと進化して、先祖の形態を残している生物で、過去に種類数やそれぞれの個体数が大繁栄したものの、今日では細々とその子孫たちが生き残っている生物(アクアマリンふくしまHPより引用)
化石として残らず進化の過程をたどることが困難なクラゲや、デボン紀に出現した肺を持つ魚「ハイギョ」の展示など、様々な種類の生き物が進化という観点から解説展示されています。
生体はこのように分類毎にズラーッと展示されており、水族館というより博物館的な陳列がされています。
そしてエリアの最後にはシーラカンスの展示が待ち受けます。
中でもアフリカシーラカンスとインドネシアシーラカンス2種の標本は世界でもアクアマリンふくしまだけでしか見られない展示(展示は2020年5月までの予定)。
そもそもシーラカンスって2種もいたのという感じですが、標本以外にもシーラカンスの幼魚の映像など他では見られないシーラカンス展示が揃っています。
続いてのエリアは「ふくしまの川と沿岸」
先ほどのエリアとは打って変わって開放的で緑が生い茂っており、天井からは自然光が降り注ぎます。まるで外にいるかのような空間ですが屋内なので雨天時でも安心。
福島県の豊かな水辺環境を再現したエリアには、福島に生息する淡水生物が小川や用水路、湧水などのエリア毎に展示されています。
順路のスロープを降って行くと自然の水の流れのように河川から海へ流れつきます。こういう水の流れに沿った立体的な順路は筆者の大好物です。
ちなみにこの写真の大水槽は「潮目の海」と言ってアクアマリンふくしまの目玉水槽。このエリアでは上からその水槽を楽しむことができます。
マイワシの群れが目の前を通ってくれたりもします。
潮目の海に目を取られがちですが、こちらの汽水域の展示もなかなか面白いです。塩水と真水が混ざり合う汽水ならではのもやもやとした層は必見。
海岸の水槽の中には白いナマコも!?
ぜひ探してみてください。
「ふくしまの川と沿岸」を抜けると「北の海の海獣・海鳥」エリアへ。オホーツク海、ベーリング海といった栄養塩が豊かな北の海に暮らす海獣、海鳥がお出迎えしてくれます。
大きなトドは迫力満点!
水中で餌を獲る姿がかっこいいエトピリカ、ウミガラスも展示されています。
そして忘れてはならないのがこちらの白黒のツートンカラーが特徴的なクラカケアザラシ。日本ではここだけでしか見られない生物です(冬季のみ展示)。
歩みを進めると再び博物館的な展示空間に。
「オセアニック・ガレリア」というこちらのエリアでは、捕鯨文化や食文化などを地元福島に根ざした視点で紹介。
また紹介解説するだけでなく、アクアマリンふくしまが取り組んでいる研究や活動などを詳細に知ることができます。
東日本大震災の影響を大きく受けたアクアマリンふくしまがこういった環境問題に取り組み、発信する姿勢は非常に説得力があり強いメッセージ性を感じられます。
先のエリアを抜けると再び鬱蒼とした空間が。
ここは「熱帯アジアの水辺」というマングローブの森へと続く水辺の自然が再現されているエリアです。忠実な環境再現がなされているため、熱帯アジアの高温多湿な環境を肌で感じることができます。
大型の熱帯魚アロワナもさることながら、コーカスオオカブトなどの甲虫類や植物も熱帯アジアのものが展示されています。
フェイクグリーンではないマングローブ(3)は迫力満点。
(3)マングローブ
マングローブ植物とは、熱帯から亜熱帯の海水に浸る場所に育つ植物です。世界で100種以上が知られ、複雑な根をもつものなどがあります。マングローブとは、そのような一帯の環境のことを指します。アクアマリンふくしまでは、国内で最も多くの種類のマングローブ植物を展示しています。(アクアマリンふくしまHPから引用)
鬱蒼としたマングローブを抜けると自然光が神々しく差し込む「サンゴ礁の海」が飛び込んできます。
色鮮やかな魚たちの美しさは言わずもがなですが、キンメモドキの群れの躍動感も息を飲む美しさと迫力。
サンゴ礁の海の先には先ほど「ふくしまの川と沿岸」のところで上から見ていた「潮目の海」の全貌が姿を現します。
あまり目にしない三角のトンネル水槽ですがこれにはちゃんとわけがあるんです。というのもこちらの水槽は福島県沖で合流する親潮と黒潮を再現した水槽で、トンネル部分がちょうど潮目になっているんです。
先ほどの熱帯アジアの水辺は黒潮の源であり、そこからサンゴ礁の海へ水が流れ、そしてここ福島沖の「潮目の海」で親潮と合流する。そういった壮大な水の流れのストーリーが展示に反映されているわけです。トンネルの右側が黒潮なのも順路構成とリンクしていて感心させられます。
そして何と言ってもストーリー性だけでなくビジュアル面の美しさも兼ね備えているから素晴らしい水槽です。
ビジュアル面や没入感だけを重視したトンネル水槽は数多くあれど、それと同時にトンネル水槽であるべき明確な理由とストーリーも持ち合わせている水槽はなかなかありません。
水槽の前には親潮と黒潮の透明度や温度、塩分濃度の違いがわかる展示も。
黒潮水槽はアクアマリンふくしまでも最大の水量を誇る1500tの大水槽。その中を悠々と泳ぐ大型魚は見応え抜群。
そして驚くことに大水槽の目の前にはお寿司屋さんが!
水族館でよく泳いでいる魚を見ながら美味しそうと言っている人がいますが、そんな方にはもってこいの場所です。
まぁ中には目の前で泳いでいる魚を寿司として食べるなんて悪趣味だ!という人もいますが私は素晴らしい取り組みだと思います。
というのもただお寿司を提供しているのではなく、写真のパンフレットような資源の安定性を基準とした情報発信を積極的に行っており、黄色と青信号のネタを中心に提供しているんです。
ずっと前からここでお寿司を食べたかったので私も水槽の前で美味しくいただきました。
ちなみに地球一号というマグロづくしのメニューです。本鮪と呼ばれるクロマグロは赤信号ですが、ここで提供されているマグロは青信号のキハダとビンチョウなので安心して食べられます。
お寿司に舌鼓を打ったら再び順路へ。
潮目の海の水槽をくぐる前に「親潮アイスボックス」というエリアがあります。こちらではオホーツク海に暮らすユニークな生き物たちが小さな水槽に展示されています。
有名なクリオネやあまり見かけないナメダンゴなんかも展示されています。
他にも見たことのない貴重な展示生物がこのエリアでは多く見ることできます。中にはここでしか展示されてない生物もいるので必見です!
アイスボックスを横目にトンネル水槽を抜けると「大陸棚から深海へ」というエリアに出ます。そしていきなりこのエリアの目玉展示が飛び込んできます。それが写真のサンマ水槽(4)!
食卓で見かける機会は多いですが水族館で見かける機会はまずない魚。というのも成魚になった個体を捕まえてきて水槽に入れても飼育が難しく、すぐに死んでしまうからなんです。
そのためアクアマリンふくしまでは海で卵を採集してきて水槽内で孵化させて累代飼育しているみたいです。
ちなみに泳ぐサンマが見られる水族館はここだけなのでお見逃しなく。
(4)サンマ水槽
アクアマリンふくしまのサンマ水槽設置への経緯や熱意はこちらの記事に書かれています。
順路を進むと床の装飾と相まって巨大生物感増し増しのタカアシガニがお出迎え。大きさもさることながら数もすごいです。
タカアシガニ水槽の横には再び小さな水槽群が。
引いて見ると気づきますが床すれすれのところにも水槽があるので忘れずに!
進むと少し開けた空間に開放型の水槽があります。
ここは友好提携園館の情報が公開されているエリアで、この水槽は友好提携館の一つである「パラオ国際サンゴ礁センター」があるパラオの海を再現したものです。
ここで展示エリアは一区切り。
ショップとレストランへ続くスロープには絵や写真が期間展示されているみたいです。私が訪れた時は震災の被害を撮影した写真が展示されていました。
小腹も空いたので館長が金型の原型を作成したという「ごんべ焼き」をいただきました。このごんべという名前はアフリカでのシーラカンスの呼称「ゴンベッサ」からきてるみたいです。
言ってしまえばタイ焼きならぬシーラカンス焼きといったところ。とても美味しかったです。
小腹を満たしたらレストランを抜けて「子ども体験館アクアマリンえっぐ」 へ。
子ども体験館というだけあって小さな子が楽しめる工夫が多く施されていますが大人でも十分に楽しめます。
本館にはいないフェネックやグリーンパイソンなども展示されています。
中にはマダガスカルオオゴキブリまで。
ちなみに多くの水槽に子どもが入れるのぞき穴があり、展示生物をより近くで見ることが可能。もちろんこのゴキブリ展示にもありますが苦手な方はやめておきましょう。
大きめの水槽にもこんな感じで入っていける穴が。
さすがに位置が低すぎて私は入るのを断念しました。
アクアマリンえっぐは展示だけではありません。先の大水槽前のお寿司屋さんもそうですが、アクアマリンふくしまは食育にかなり力を入れています。なのでこのエリアには写真のような釣り場があり、自分で釣った魚を食べるという体験ができます。
他にはタッチプールなんかもあります。
このエリアはボランティアスタッフさんが運営をサポートしているらしく、お客さんが自分だけだったせいか色々とサービスしてくれて、プールにいる様々な生き物を触らせてもらえました。
屋外には広大なビーチもあります。
蛇の目ビーチというのですが実は裸足になって入ることも可能なんです。もちろん魚などの生き物も暮らしており触ることもできます。いわゆるタッチプールの超巨大版と言ったところで公式でも世界最大級を謳っています。
ただ、解放されるのはGW以降なので今回はおとなしくウッドデッキからビーチを眺めていました。
水面を除けば立派なタイがうようよと泳いでいます。
また、屋外には他にも「BIOBIOかっぱの里」という小川や沼などの水辺の環境を再現したビオトープもあります。時期が時期だったので生き物の姿は見つかりませんでしたが、春から夏にかけてはいろんな生物の姿が見られると思います。
ビーチやビオトープを抜けて本館に戻ることも可能ですが、元来た道を戻り、アクアマリンえっぐへの連絡通路の途中にあるエレベーターで上へ。
エレベーターのドアが開いた瞬間解放的な景色が広がります。先ほどのビーチも一望でき最高のロケーションですが。。。天気に恵まれなかったですね。
これで本館近くの行けるところは全部周ったのですが、ボランティアスタッフさんによるバックヤードツアーなるものが無料で参加できるということだったのでそちらの様子もご紹介。
友好提携円館の横にバックヤードツアーの受付がありますのでそこで参加したい旨を伝えましょう。
ちなみに時間は定員が集まり次第出発なので都合の良い時間に受付すればオッケーです。ただし15:30までなのでその点だけ注意。
空いている時なら受付したらすぐに出発です。所要時間は30分くらいなのでトイレは済ませておきましょう。
スタッフ通用口からバックヤードへ。
廊下には館長さんが描いたという生き物の絵がズラーッと並びます。どの絵もかなりクオリティが高いです。
廊下を進むとホワイトボード前で早速解説が始まりました。
このボードにはアクアマリンふくしまの展示生物に関係する情報が書かれているみたいです。
他にも取り上げられた新聞記事など様々なアクアマリンふくしま情報が一目でわかるようになっていました。
調餌場や水槽裏の見学をしつつ外の搬入口へ。
新たに搬入する魚などは写真のタンクに入れてクレーンで上へ釣り上げて水槽に入れるみたいです。
ちなみにタンクの内側が網目になっているのは魚が壁に衝突しないための工夫みたいです。また、色がオレンジなのにも理由があるのですがそれは参加して聞いてみてください。一応両方ともクイズとして出題されたので。笑
バックヤードを進むと展示休止中のウミガメが予備水槽からお出迎えしてくれました。
時期にもよりますがバックヤードツアーに参加しないと見られない生物もいるので、バックヤードツアーオススメです!
大型の水族館となるとろ過装置などの設備もとんでもないスケール。
ちなみに水族館は建物の半分以上はバックヤードが占めます。それに比べて公開されているエリアの割合はおよそ全体の40%程、展示エリアとなると20%程しかありません。
バックヤードツアーも終盤。
最後はツアー参加者用の資料室です。アザラシの剥製が存在感を放っていますが私が衝撃だったのはこちら
チンアナゴの剥製です。生きている状態ではなかなか見ることのできない身体の全体像が、剥製では顕になっていました。
思わず欲しくなってしまいましたが残念ながら非売品(当たり前
これにてバックヤードツアーは終了。
そして展示も全部見終わったと言いたいところですが〜〜
出口の近くに金魚館なるものが!
すみだ水族館以外でこんなに金魚を展示している館があったとは!
鉢型の水槽は上から金魚を覗くことも可能。
内装もなかなか綺麗でレイアウトの凝った水槽も何個かあって見応えがありました。出口のすぐ横にあるのでお見逃しなく!
まとめ
アクアマリンふくしまいかがでしたでしょうか。
水族館ヲタクではない一般の方からしたら何がそんなに賞賛に値するのかわかりにくいかと思いますが、見る人が見れば「展示構成・展示理念・取り組み」何をとっても非の打ち所がない水族館です。
フィーディングタイムを除けばショーなどの派手なイベントがないことや、膨大なキャプションはもしかしたら少し退屈だと感じる方もいるかもしれません。
しかし、そこは多くの方が展示の良し悪しの判断基準にしているであろう「魅せ方」で、うまくカバーしているのがさすがアクアマリンふくしまといったところです(カバーどころではないが)。
潮目の大水槽や空間そのものを忠実に再現している熱帯アジアの水辺は、誰が見ても素晴らしく映る展示だと思います。
また「ふくしまの川と沿岸」から始まる壮大な水の流れのストーリーとリンクする順路構成も素晴らしいの一言につきます。
無料のバックヤードツアー、食育やシーラカンス研究への取り組みなど、他にも感心する点は多々あるのですが話すと止まりそうもないのでこの辺で。笑
ただ勘違いしないでもらいたいのは、理念とか展示構成なんか気にしてないよ!って方も楽しめる水族館なのは間違いないということです(ここ大事)。
見ればわかるすごいやつやん!ってなること間違いなしなので「環境水族館アクアマリンふくしま」ぜひ足を運んでみてください。
長くなりましたが最後まで読んでくださりありがとうございました